坩堝の電圧

読み : ルツボノボルツ

『坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)』はくるりの10枚目のアルバム(2012年9月19日リリース)。本アルバムにはくるり史上最多となる19曲が収録されている。
『my sunrise』はサントリー天然水の、『o.A.o』『taurus』はチオビタドリンクCMソングとして起用されている。
公式サイトの「Qururi on WEB」の「岸田日記」にてヴォーカルの岸田繁による全曲解説が見られる。新メンバーである吉田省念とファンファン加入後はじめてのアルバム。

『坩堝の電圧』の由来・意味

『坩堝』の由来は収録曲『taurus』の歌詞に登場する「愛情のるつぼ」。「坩堝」には2つの意味がある。ひとつは「高熱で物質を熔かすための耐熱容器」(原子炉・格納容器も想起させる)。もうひとつは「人種のるつぼ」という言葉で喩えられる「多種多様な人々がひとつの土地で暮らすことで生じる独特の文化・エネルギー」という意味。また「興奮の坩堝と化す」は耐熱容器から転じて「熱気(=エネルギー)」という意味が含まれる。
「電圧」=「volt(ボルト)、複数形:volts)」

本アルバムでは震災以降によく言われるようになった命の尊厳、人々の絆といった言葉の奥にある「地域性」がテーマに含まれている。
『glory days』では「福島の友達も」という歌詞が登場し、『soma』が福島県浜通りにある相馬市、南相馬市(福島第一原発の事故が原因で立ちいることが出来ない地域も含んでいる)を由来としていることからも、「坩堝」=「原子炉」=「原発」という意味が感じ取れる。
「そこに行かなければわからない呼び名」、つまりその地域に住んでいる人しか知らない町の名前が多く、市町村合併や震災地域性でそのことが顕著になり「地域性」をなくした場所があり人々がいるということをツアーを通してみえてきた。そういった「地域性」の損失を象徴する言葉として「坩堝」という言葉が頭に浮かんできたと岸田繁はインタビューで語っている。

今はいろんなものを坩堝に例えて話すことができる時代なんじゃないかと思うんです。地域性の話もそうだし、人間の心の中も同様に坩堝だと思う。原子炉も冷却の配管が少し壊れただけで、問題が起こってしまう。どこか一箇所から蒸気が漏れただけで、ダメになる。それは人間の身体や心と同じようなものだと思います。そういうイメージが頭の中を駆け巡っているうちに、ふと「るつぼのぼるつ」という言葉が降りてきた。

「papyrus」(2012年10月号)インタビューより

「電圧」の由来については語っていないが、登場当初は変わっていたがパワーを持つことで成功したバンド、レッド・ツェッペリン、ビートルズ、レディオヘッド、チャゲ&飛鳥を引き合いにし、自分が変わっているのは普通のことであり「パワーを持っていれば成功する」と語っている。多種多様な人々がひとつの場所に集まる場所(=「坩堝」)から「電圧」のような力強いパワー・エネルギーが発揮される、そんな意味が込められているのかもしれない。

『pluto』の意味

『pluto』は次曲の『crab, reactor, future』で使用しているいくつかのトラックを逆再生しオーバーダブとエフェクト処理を施している。「pluto」はローマ神話に登場する冥界の王の名前で・ギリシャ神話の冥王・ハーデスの別名。岸田繁は本曲を「恐怖をあからさまに表現したもの」と語っており、『pluto』というタイトルは冥王のような恐怖感を表現しているのだろう。
(手塚治虫の『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」を原作とした浦沢直樹のマンガ『pluto(プルートゥ)』を由来としている可能性もある)

『glory days』のエンディングには『ばらの花』『ロックンロール』『東京』の歌詞が登場する。PVは『ばらの花』と同じく福島県の薄磯海岸で撮影された。以下のYouTubeの公式PVは途中までしか見れないが、メンバーが最後に手に持っている花は「ばらの花」。