正義の反対は悪なんかじゃない

読み : セイギノハンタイハアクナンカジャナイ

正義の反対は悪なんかじゃないの元ネタ

「正義の反対はまた別の正義」は『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし(しんちゃんのお父さん)が発した名言とされているが、原作およびアニメでひろしはこのセリフを発していない。このセリフは2chのVIPのスレ「野原ひろしの名言集」で誕生したものと考えられている。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/02(木) 20:19:14.89 ID:orb38B0gO
いいか、しんのすけ。
正義の反対は悪なんかじゃないんだ。
正義の反対は「また別の正義」なんだよ。

しかし、初出と思われるスレ「野原ひろしの名言集」には実際には言ってない名言が多数含まれており、”正義の反対は悪なんかじゃないんだ。正義の反対は「また別の正義」なんだよ”は原作にはないセリフである。
このセリフの元ネタになっているのはゲームボーイアドバンスの野球ゲーム『パワプロクンポケット7』に登場する自称マッドサイエンティスト・黒野鉄斎(黒野博士)の以下のセリフである。

黒野博士:
悪の反対は善、善の反対は悪じゃ。正義の反対は、別の“正義”あるいは“慈悲・寛容”なんじゃ。

黒野博士はマッドサイエンティストを自称しているが実は善良な心の持ち主で、悪の組織ワルクロ団の下位組織ヒーローに怪人量産マシーンを盗まれたため、主人公と共通の敵であるヒーロー達を倒すために練習器具を提供したりと主人公を助ける。
主人公がヒーロー達を倒した後に“正義”とは何かと悩んでいる時、黒野博士は「正義の反対は、別の“正義”あるいは“慈悲・寛容”なんじゃよ」という言葉をかけ、正義とは何かを語り聞かせている。
名言として上記の部分が抜粋されて使われているが、元ネタの会話では黒野博士なりの”正義”の哲学が語られており、全文を読めばなぜ黒野博士が「正義の反対は別の正義」と言ったのかが分かる。

主人公:
ねぇ博士、正義や悪ってなんなんでしょう?
レッドが悪い奴だと思うから野球で勝負して追い出したんです。
でもあいつのおかげでチームは強くなったし甲子園にも行けるようになった。
俺のやったことは正義なのか、それとも悪なんでしょうか?

黒野博士:
ああ、そりゃ簡単なことじゃ。
“正義”の反対はなんじゃな?

主人公:
悪じゃないんですか?

黒野博士:
悪の反対は善、善の反対は悪じゃ。正義の反対は、別の“正義”あるいは“慈悲・寛容”なんじゃ。
正義とは、人の従わねばならん道理を言う。”正義を行う”となれば、道理を守らせることにもなる。

主人公:
それはいいことなんですか?

黒野博士:
それは必要なことじゃが、問題は道理が一つでないことじゃ。
“殺すな・奪うな”までは殆どの思想で共通じゃが、その先はバラバラじゃ。
“男女は平等”かもしれんし、“女性は守るべきもの”かもしれん。
“どんな命令にも従う”が正義なら、“悪い命令に逆らう”のもまた正義。

主人公:
じゃあ、なにが正しいんですか?

黒野博士:
みんな正しいんじゃよ。道理に関する限り、正しい事は一つと限らないんじゃ。

主人公:
でも、それじゃ困りますよ。なにが正しいのかわからない!

黒野博士:
だから”法”がある。なにをしてはいかんかの約束じゃ。
・・・これも正しいとは限らんがね。
じゃから、結局のところはその時ごとになにが正しいのかよく考える必要があるじゃろうな。
結局のところ、みんなにとって最も良い事を探して選択するのが”善”なんじゃろう。
じゃから、正義は善と限らん。ともすれば自分の信じる道理を他人に押し付けることになるからな。

主人公:
・・・よくわかりません。

黒野博士:
じゃあ、最初の質問に戻ろう。
やらなきゃならんと思ったからやったんじゃろう?
本当にそれが正しかったのか、最善のやり方だったのか、ときどき反省してみるんじゃな。
いずれ、自分で納得できる時が来る。

主人公:
・・・はぁ。
じゃあ、悪って何なんです?

黒野博士:
一般的な定義から言うと、世の中のルールを破って他に迷惑をかける行為じゃな。

主人公:
でも、博士は”悪”なんですよね?
どうしてわざわざそんなものをやってるんですか?

黒野博士:
わははは、一般的と言ったじゃろ?
ワシにとって、悪はロマンなんじゃよ。ロマン。
わかるか?
ルールにとらわれないことじゃ!
希望、生命力、突破点、新しいもの。
幸せになりたいという欲望!
昔は、”科学”も”自由”も”人権”も”平等”もみーんな”世の中の平和をみだす悪”じゃったんじゃよ。

主人公:まさか!

黒野博士:
なーに、ちょこっと歴史の本を読めばわかることじゃよ。
それじゃあな、少年! 若いうちは悩んでおけよ!

黒野博士にとって”悪はロマン“であり、ルールにとらわれないものであることからマッドサイエンティストを名乗っているのだそう。

話の流れとしては、ヒーロー達は主人公との野球勝負で敗れて一度は消滅するが、甲子園優勝後に復活して実力行使に出ようとする。黒野博士は開発した巨大ロボ・ガンダーロボを主人公に与えヒーロー達を倒す、というものである。
実はヒーロー達は主人公が子どものころに描いたヒーローの姿が具現化した存在で、ヒーローの一員であるレッドは最後に、自分たちは「(主人公が)甲子園に行きたい」という願いの代償のため越えなければならない存在として召喚されたのだ、と語って消滅した。
ヒーロー達が消滅すると主人公以外、黒野博士も含めた全ての人間からその存在の記憶が消滅してしまったため、主人公はこのことを博士に話すと博士は以下のように答えた。

黒野博士:
正義は本質的に妥協を禁じる。
じゃから善悪の判断が不安定なものがとにかく正義を行おうとすれば・・・

主人公:
自分に逆らうものは全て排除するわけですか。

黒野博士:
あるいは、同じ価値観に洗脳するか。

マッドサイエンティストを名乗り”悪はロマン”と語る黒野博士は”正義”について自分なりの哲学を持っている人物で、「正義の反対は~」以外にも「道理に関する限り、正しい事は一つと限らないんじゃ。」「正義は善と限らん。ともすれば自分の信じる道理を他人に押し付けることになるからな。」など”正義”に関する名言が多くみられる。
「正義の反対は悪なんかじゃない~」は野原ひろしの名言とされるが、黒野博士のセリフを野原ひろしが言いそうな名言として創作した可能性が高い。

参考:偽典『野原ひろしの名言集』成立過程が面白い。『正義の反対は別の正義』はどのように紛れ込んだか
野原ひろしは本当にそんなことを言ったのか? 「クレヨンしんちゃん」を全巻読んで徹底検証!

原作にはない創作された野原ひろしの名言

野原ひろしの名言として広まっている言葉の多くは原作にはなく、元ネタが別に存在する。これらの名言はひろしが言いそうな名言であったはずが、ひろしの名言としていつの間にか定着してしまっている。

一日だけ幸せでいたいならば、床屋にいけ。
一週間だけ幸せでいたいなら、車を買え。
一ヶ月だけ幸せでいたいなら、結婚をしろ。
一年だけ幸せでいたいなら、家を買え。
一生幸せでいたいなら、正直でいることだ。

(西洋のことわざが元ネタ)

あなたが明日会う人々の四分の三は、「自分と同じ意見の者はいないか」と必死になって探している。
この望み をかなえてやるのが、人に好かれる秘訣である。

(アメリカの実業家アンドリュー・カーネギーの言葉が元ネタ)

夢は逃げない。逃げるのはいつも自分だ

(実業家の近藤太香巳氏の言葉が元ネタ)

できると思うからできるのだ。

(古代ローマの詩人のウェルギリウスの言葉が元ネタ)

地獄への道はいつも善意で満ちている。

(元ネタは不明だが異なる言い回しが複数あるもよう)

以下の名言は紛れもなく野原ひろしが発した言葉。

俺の人生はつまらなくなんかない!!
家族のいる幸せを お前たちに分けてやりたいぐらいさ!!

(映画『オトナ帝国の逆襲』より』

しんのすけのいない世界に未練なんかあるか!?

(映画『アッパレ戦国大合戦』より)

自分一人ででかくなった気でいる奴はでかくなる資格は無い。

(映画『暗黒タマタマ大追跡』より)

俺の靴下はジャスミンの香り