死ねば助かるのに

読み : シネバタスカルノニ

「死ねば助かるのに」は、ここぞという勝負時に思い出して欲しい名言。

「死ぬ」と「助かる」という矛盾した言葉のように聞こえるが…。

死ねば助かるのにの元ネタ

このフレーズは、漫画『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』の主人公・赤木しげるの台詞である。

ある夜、南郷という男がヤクザを相手に借金の棒引きを賭けて麻雀勝負を行っていた。勝てば借金がチャラになるが、負ければその借金は自身の生命保険によって返済されることとなる。

しかし南郷は流れに乗れず連敗、これ以上負けると次の半荘に進めないという状況に陥る。澱んだ空気を変えて欲しいという気持ちから、突如雀荘に入り込んで来た見知らぬ中学生・赤木しげるを自分が呼んだと嘘をつき招き入れる。

その直後、逆転も在り得るテンパイ(あと1牌で上がれる状態)へとこぎつけた南郷。しかしその逆転のためには、すでにリーチをかけている相手の危険牌を捨てる必要があった。危険牌を切り逆転を狙うか、安牌を切り最悪の事態だけは避けるかという決断を迫られる。

ここで南郷は危険を避け、無難に3位確保を狙って逆転のチャンスがある手を崩そうとする。牌を持ち、捨てようとしたその瞬間、背後に座っていた赤木がつぶやいたのが「死ねば助かるのに」である。

これは『アカギ』の第1話であり、作中で赤木が初めて発した言葉。この時まだ赤木は中学生。

「死ねば助かるのに」の後の赤木の言葉も重い。

赤木:
死ねば助かるのに

南郷:
おまえ…麻雀がわかるのか…?

赤木:
いや…全然…

ただ…今 気配が死んでいた…
背中に勝とうという強さがない ただ助かろうとしている
博打で負けの込んだ人間が最後に陥る思考回路…
あんたはただ怯えている

「死ぬ」と「助かる」は矛盾しているが、赤木が言いたいのは、ただ助かろうとする人間は、その場の窮地を凌ぐことができても結局は逃げ場を失う。死ぬ覚悟でリスクを背負い勇気を出して勝負することで助かる道も見えてくる、ということ。

赤木の言葉に考えを改めた南郷は捨てる牌を危険牌へと変え、その後逆転へと向かっていく。

上記の赤木の台詞の通り、赤木は麻雀のルールも何も知らない。赤木はどの牌を切れば良いのかわかっていたわけではなく、南郷が勝負をしにいっていないこと、そして勝負をする時は今まさにその時だった事を感じ取っていたというわけだ。

鷲津の言葉

『アカギ』でのライバルキャラと言えば鷲津巌。その鷲津も「死ねば助かるのに」と同じような考えの名言を残している。

赤木との血抜き麻雀で負けが続き財産を失い、自身の血液も抜かれ始めた鷲津。さらに赤木からの直撃を喰らえばもう勝負はどうなるかわからないという状況で、なんとか場をしのごうと考えていた。

逆転へのテンパイへとたどり着いた鷲津だったが、リーチをかければ捨て牌の選択はできなくなり、赤木に直接振り込んでしまうリスクも高くなる。それでも鷲津はそのリスクを背負いリーチを決断する。

鷲津:
今 優先すべきは… 何よりも守り…
守備… 守備… 守備… 打たぬこと…!

が…! が…! が…! が…! が…! が…! が…! 果たしてそうか…?

本当にそうか…?

もはやその考えじゃ立ち行かない…! ジリ貧…! 自滅…!

このままじゃわし… わしは… 死ぬじゃろっ…!!リーチッ!!! 

血を抜かれ死ぬことを恐れ、守ることばかりを考えていた鷲津がそのままではいづれ死ぬと悟り捨て身のリーチ。リスクを承知で前進した鷲津はこの直後に上がり牌をツモり窮地を脱した。

鷲津:
くはっ…! くふっ…! くふふふっ…!
ククク…! そうよの…!
びびって逃げ回る者に… 女神が微笑むはずもないっ…!

呆けとった…! わしは…!
呆れる程呆け… 忘れとった…! 勝ちへの道…!
勝利の常道を…!

勝負は… 勝負事は… なにはともあれ… まず…
押すっ…! 渾身の力で押すっ…!

赤木も鷲津も、逃げた先に勝ちは無く、勝負の時には死ぬことを覚悟して道を開いていかなければならない、と考えている。

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